vol.032 ネズミ犬で大騒動

突然カミさんが、またペットショップがもてあましていたダックスフンドを連れて、家に帰ってきました。
「このワンチャンの飼い主が見つかるまで、家で飼っておくよ」
というわけです。
見ると、ネズミみたいに小さい犬。

「でも、わが家で飼うわけではないのよ。あくまでも、飼い主が見つかるまで家で保管しておくだけなの」
とカミさんは宣言し、さっそく飼ってくれる人を探すために、電話をかけまくりました。

ところが、その犬を見た娘が一目惚れ。
「わが家で飼いたい」と言い出したのです。
こうなると、うちの娘は頑固です。
なにがなんでも「家で飼う!」の一点張り。

思わず、私は叱りつけました。
「わが家には、すでにダックスと柴犬がいる1匹ずついる。そこにまた1匹加われば3匹。いったい誰が面倒をみるというのか! お前は、あと1年で家を出ていく身なんだぞ。負担を親に押しつける気か」

一度言い出すと、私は、暴走列車のように止まらなくなるたちです。
「だいたいお前は、日頃からワガママで、態度がでかい。親に養ってもらっているという謙虚さがない。
だから平気で、年に何枚をCDを買ってしまう。無駄づかいが多すぎる。この俺なんか、年に1枚ぐらいしかCDを買わないぞ。最近、やっと大木トオルのスイート・ソウル・ミュージックを買っただけだ」

こういう時、うちの娘は決してめげません。
「お父さんは、別に欲しい物なんか、何もないじゃないですか。熱帯の森にいるチンパンジーみたいに、木に成ったバナナだけ食べていれば一生を終えられる人。
でも私は人間なの。欲しいものを欲しいと思うのが、人間なんだもの」

私はムカァァァ!
「俺は、ムダな金をつかわないことをモットーとしているだけなんだ。要するに、自分にキビシイ大人ということだ。自分にキビシさを持てるからこそ、猿から人間になれたんだ。お前は猿か?」

「猿でけっこう! 娘の気持ちすら理解できない人間と暮らすくらいなら、猿でいた方が幸せよ」

「猿にもいろいろあるが、猿がCDを買うか? 部活でサックスを吹くか?」
まったく、私の話はワキ道に逸れていくばかり。

引っ込みどころがつかなくなって、私の攻撃の方向は、カミさんへ。
「だいたいお前が、犬なんか連れてくるのが悪いんだ!」

「なによお父さん! 私は最初から飼うなんて、一言もいってませんからね」

たった一匹の犬で、カミさんと、私と、娘が三つどもえ。
こうなると、もう収拾がつきません。
犬の話はどこへやら。

「おい娘! とにかくお前は、部活から帰るのが遅すぎる。しかも土曜、日曜まで、補習や部活だと家を空ける。
お父さんは、補習なんかすべてサボったぞ。5時過ぎに学校になんていたことなんかない。正統派の帰宅部(きたくぶ)だ。
勉強なんかするな! お前はマジメすぎるのが欠点だ。学校なんかサボってこそ、人間は大きくなれるんだ」

私は、日本の詰め込み教育の受験体制が大キライで、他人と競うことも苦手でしたから、ついつい、頓珍漢な説教に流れてしまいます。

そんなこんなで、わが家は「家庭崩壊」寸前の、冷戦状態に突入。

ところが、三日目に入ると、ネズミ犬のかわいい目が、次第に私をとりこにするようになりました。
「う~ん…。この犬は、意外と良い相をしている」

で、「やっぱり、ネズミも飼おうか」と私が言い出したことによって、わがファミリィの冷戦も終結。
家には、また温かい空気が流れはじめました。

つぶらなひとみのネズミ犬を入れて、中型犬(しば犬)、小型犬(ミニチュアダックス)、超小型犬(カニンヘンダックス)の3匹の犬が、いつも家の中をゴロゴロするようになりました。
まるで小動物園。

大アラシが吹くと、いつも、その後がなごやかになる家族です。
対決があってこそ、相手の言い分がはっきり解る。
大アラシは、時として、お互いを理解しようするためには必要なものなのかもしれません。
そのきっかけをつくってくれた、新しい犬。
わがファミリーは、犬が3匹いてやっと調和のとれる、変な家族です。

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